「…違う」
 べこん、と紙束を丸めたもので頭を殴られて、頭を抱えながら少年は恨めしそうに隣の青年を見上げた。彼はというとこちらを見ようともせず、ただ片手に持った一枚の紙をじろじろと見ている。
「何処が違うのか、言ってもらわないと判らないんだけど」
「まとめて教えてやるから待ってろ。…ああ、ここも違う、これもだ」
 べこべこと、間違う度に殴られて、深い海の色の髪を持った少年は不貞腐れる。机に頭を乗せて、いじけ始めた。
「だから、僕には向いてないって言ってるのに…」
「こんなもん、基礎がしっかり判ってりゃなんとかなるもんなんだよ。実際間違ってんのは教えたばっかのルートものだけだ、あとは大丈夫だ」
「…ほんと?」
 心持ち気分を直して顔をあげると、ようやく紅の瞳が少年を見、笑う。紙を机に置き、少年の方へと送り、自分は横から覗き込む様に顔を寄せた。まずはこれな、とひとつの文字と数字の集まりを指すと真剣な表情でこくりと少年が頷くのに、好きなんだか嫌いなんだかと、複雑な気分になる。
 最後の文字と数字の集まりの部分の問題が解決したと同時に、タイミングを合わせたかの様に一人の青年がいたいた、と呟きながら食堂に入り込んで来た。
「こんな所に居たのか、てっきりカーシュ兄の部屋でやってるかと思った」
「昼にこっち来て、そのままだったからな。んで、どうした?グレン」
 グレンと呼ばれた青年は、青緑の瞳を細めて首を振る。少年の隣に座り込み、片肘を机について頬杖をついた。
「別に、お休み中の筈のセルジュがいなかったから、またカーシュ兄にでも習いに行ってるのかなって思って。何処迄やったんだ?」
「ルート。もう、訳が判らないよ」
 肩を見ても判る位の溜息をつくのに、グレンは声を出して笑う。
「最初はそんなもんだよ。そういうのは基礎に慣れないと頭沸騰するよな」
「そうそう。何処かの先生は間違えるとすぐ頭叩くし」
「数学になると途端に堅くなっちまうお前の頭をほぐしてやってんだろうが」
 今度は叩かず、くしゃくしゃに髪を掻き回してやると、むっつりとセルジュは口を噤んだ。
「…カーシュ兄、頭叩くと、脳細胞減るって聞いた事ない?」
「あ?いらんもの減るならいいだろ?」
「どういう事だよ、それってッ」
 珍しくムキになるセルジュにグレンは眼を丸くしたが、カーシュは驚く事もなく受け流す。どうやらこれを教えている時はセルジュは感情の上下が激しくなる様だ。
 …慣れてない事だから、ストレスかかるのかな、やっぱり。
 等と考えながらからかわれるばかりのセルジュをグレンは苦笑しながら見ていると、視線に気付いたセルジュが彼を見返す。
「グレン?」
「ん?いや、何でもない」
 不思議そうに首を傾げるセルジュからカーシュに視線を移すと、それに気付いた彼はほんの少し困った面持ちを浮かべた。
 …なんというか。これだけで、彼の心情を判ってしまうと言うのも。
 苦笑で返し、グレンはセルジュの頭を先程のカーシュがやったのと同じくくしゃくしゃに掻き回した。



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やばい。やばい。やばい。思いっきり読みあさった小説の影響受けてます(汗
主語書いてなかったんですが、カーシュがセルジュに勉強を教えている場面
わたしの設定でエルニドに学校はないということで。必要最低限のものを、村長が教えている感じです
んでもって、セルジュが幼い頃の村の村長は、あまりものを教えなかった事で(え

ていうかーまじめにーわ た し。 …………せるじの声は保志さんが理想かもなーとか思わないでもーアハハハー
だ、だったらグレンは石田さん、で、… え、と、その、あの……………… …
……すいません一人でもえそうなので脱兎させてください
というか(舞い戻り)カーシュの声は是非東(強制終了