セルジュ…
自分の名を呼ぶ声がする。誰だろうと、無意識に思っているかもしれなかった
セルジュ…
再度声が聞こえる。ああ、これは、母の声だ
こんな感じの声は、いつも自分が寝坊をしている時の声だった
……あれ、寝過ごしたのかな
ぼんやりと思う
セルジュ…何時迄寝てるの?
いい加減、もう起きなさい、セルジュ!
殆ど呆れた声で、ほんの少し大きめに言われる言葉
その声で漸く彼は薄らと目を開けた
薄暗い部屋の中、そこにスクリーンの隙間からはしはしと流れる陽の光が、一筋、一筋と入っている
…朝の時間から随分経っているみたいだ
ぼんやりと、天使の梯子と天井を見つめる。妙に気持が悪くて起きるのが億劫だった
ふと、額に手をやってみると、汗が手についた。…じわりとした、少し嫌な汗
夢を見た、気がする
あれは、夢なんだろう…か
妙にリアルで、嫌な感じのする夢。今でも最後の場面を思い出そうとするとぞっとする
手に、柄を握りしめた感触が今でも掌に残っている気がするのだ
振払うように上半身を起こす。それから、また動かなくなる
寝過ごしてしまった日は決まってこうだ。最初の何時間かは身体の自由がきかない
ぼやぼやと夢の内容を忘れようと今日の予定を思い出す
いつも通りに朝起きたらまず朝食の手伝いをする
作業しっぱなしでほったらかしてしまった部屋の片付けをする
居間を軽く掃除してから夕食の材料の買い足しをしに行く
ええと、洗濯物を出しておけと言われていたか。昼は母がやると言っていたのでいいとして
それから…………それか………ら…───────
あ
突然、階上が騒がしくなった。漸く目が覚めたのかしらと彼女は溜息をついた
ばたばたと急いで階段を降りてくる音、それが、途中で痛い音に変わる
同時に聞こえてくる息子の悲鳴、続く痛い音
「い、ったぁ〜…」
「そんなに焦らなくても、お天道様はとっくにのぼってるわよ」
呆れた声で、彼女は階段を踏み外して背に打身をつけた息子を見下ろした
あ、と声を漏らし、彼は俯いていた顔を上げて曖昧に笑顔を向ける
「…おはよ」
「おはよう、ようやくお目覚めのセルジュくん。
所でおまえ、隣のレナちゃんと何か約束していたんじゃない?」
ああ……やっぱりそうだった……
ぴしりと体中凍り付いた音を聞いた
確か昨日、用事があるから午前中付き合ってと言われたのだ
よりにもよって、彼女との約束をすっぽかしてしまった
明らかに引きつっている息子の笑顔に呆れながらも、母、マージは更に言葉を重ねた
「レナちゃん折角迎えに来てくれたのに、おまえと来たらぐっすり眠り込んでて起きないんだから
駄目じゃない、約束すっぽかしたりしたら。女の子を怒らせると、あとが怖いわよ」
うん、と項垂れて答えようとしたが。しばし目を瞬かせる。そしてゆっくりと、再度顔を上げる
…ぎしぎしと錆び付いた機械の動きさながらに
「……… … … …迎えに、来た?」
「ええ、そうよ」
「〜っ どうして起こしてくれなかったのさ!」
「あら、起こしたわよ?レナちゃんと二人で耳もとで優し〜く「起きなさ〜い」って連呼したんだから」
絶句。
後、首から頭上まで真っ赤になっていく
如何に幼なじみだといえ、寝顔を見られる等…あまり嬉しい事ではない
部屋も昨日の作業そのままで、酷い事になっているというのに
おまけに母と共に何かしていたかもしれない
その時はまだ夢の中だったから自分がどんな反応を返したかなんて判るはずもなく
…悪夢だ
あの夢の続きなのだと思いたかった
頭を抱えて羞恥に耐えていると、ふ、と上で溜息が聞こえてくる
「…其れで、大丈夫なの?」
顔を、あげる。
「夢は、覚えている? レナちゃんが帰った後、魘されていたのよ」
何度か目を瞬かせた後、ああ、と思い出し、セルジュは母に笑う
「大丈夫。ちょっと、嫌な夢だっただけ」
そうなの?と再度問いかけてくる母に頷いて、大丈夫ともう一度呟く
肩の力を抜き、苦い笑いを浮かべて、母は観念した様に息子を見た
「ならいいけれど
とにかく、家の事はいいからレナちゃんの所に行ってらっしゃい
どんな仕打ちを受けるのも覚悟しとくのね」
「…う」
エレメント攻撃だけは避けたいと思うものの、今回ばかりはそれも回避できないかもと、少しだけ弱気になった
榊諧浬風オープニング
課題の構想練ってる最中に出てくるもんだから困ったもんよわらし
覚え書きみたいなものなのでちょっと読みにくいです、すいません
何とか、セルジュをセルジュにしたくて四苦八苦しております
ちなみに、あんまりにも自分の中の彼等と合わない台詞は改編する事に致しました
やっぱちょっとセルジュもマージもオリジナルの彼等と違う人になっちゃたのですー(泣)
僕がよく描いててあんま違和感ないのってキッドだけな気が
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