|
「うん、やっぱまずやっつけるべきはその案件かな」 マリカが持ち上げた書類を指差して、思案しつつリウが言った。 「となると隊の編成変えなきゃならないんだけど…フューリーロア達に話つけた方が早いかも。出来ればメギオンさん達に入ってほしいとこなんだけど、聞いてみてくんないかな」 「そうなるわよね。判った、明日聞いてみる」 「うん、頼んだ」 マリカの返答に頷いてから、リウは嗚呼、と長い息を吐いて肩を落とした。 「段々処理が遅れて来たなー。なんで一気に物事ってやってくるのかね…」 「最初はリウひとりでも何とかなってたのにね」 「その辺は仕方ないだろう。お前も城の事だけ考えていられる立場ではないしな」 「ああ…その話いまは思い出さない様にしてたのに…」 自分の故郷につい先日赴いていた彼はその事を思い出したらしい。どんよりと顔に影を落とすのには、三人ともに苦笑を漏らした。 「そっちの事は、私達が口出し出来る事じゃないからどうにもできないしね」 「いや、城の事やってくれてるだけでも全然大助かりー。寧ろこの頃任せっぱなしで悪いなって思ってるくらい」 「出来る事を分担しているだけだ。気にするな」 「うん、結構楽しんでやってるから」 「じゃあ、お言葉に甘えてこれからもいろいろ任せると思うけどよろしくな。あんまり離れすぎると現場の状況判んなくなるから、時々顔出せる様にするし、こっちの現状知ってもらう為にも呼ぶと思うけど」 「りょうかーい。」 「俺は次の遠征に行くんだろう?」 「お、そーだそーだ、宜しくなジェイル!」 今まで仲間のやりとりを見ているだけだったレストマーが、にやりと笑ってジェイルに言った。しかしそれに応えが返らず、彼は眼を瞬かせる。周りを見渡して初めて其処で彼は三人に不躾な視線を送られている事に気付いたようだ。不思議そうに彼が口を開く。 「? 何だよ?」 「なんか…うん…」 「一番忙しいのこいつだって判ってるのに、一番楽そうに見えるのはどうしてなのかな」 「性格、としか言いようがないんじゃないか?」 ぽつりぽつりと呟かれる言葉に、話の中心であるレストマーは何の事だ? と首を傾げた。埒があかない、と言わんばかりにマリカが手を振って話を流す。脇に抱えた封筒から書類を引き出した。 「話が逸れすぎるとまた遅くなるから次の報告に行くわよ。次は…と。あー、皆さんお待ちかね」 彼女の言葉に、リウとレストマーの表情がうえ、という呻きと共に歪む。 「苦情報告のお時間です」 「まじか! 今回あんのかよ…」 ぐったりとした表情でレストマーが愚痴る。 「でもこんだけ後って事は比較的軽いものだと期待したいなー」 引き攣った表情でリウがマリカに尋ねると、その通り、とにっこりとマリカが笑った。 「大体は解決済み。今朝の件だけが残ってるの」 「あーやっぱり。」 「うん、でも今朝の件はレストマーに話を通してからって事になったから、それだけね。あとは眼を通しておいて」 「りょーかい。で、今朝の件って?」 リウの問いに、思い出したのかマリカだけでなくジェイルが疲れた表情を見せた。 「これは苦情っていうか泣きつかれたというか…いつものひと。ラミンがまたあの曲を酒場で弾いてね。ローガンさんとエリンにどうにかしてって言われたの」 「よし判った。明日あいつ取っ捕まえて血ぃ吐くまでぶちの…めすまではやらない。楽器取り押さえとく」 割り方本気で告げた言葉だったが、一斉に寄せられた批判の視線にレストマーは方向を若干変えた。いつもレストマーの行動には否を言わないジェイルだったが、彼も今回ばかりは勘弁してくれ、というような表情を浮かべている。 「お前ね、この前の忘れた訳じゃないよな?」 「忘れてねーよ。ただあれは場所が悪かっただけで…」 「ラミンの常駐場所を考えなさいよ。また一ヶ月近い間ご飯は握り飯だけ、それもひとりで食べるのって嫌じゃないの?」 「嫌だ。ぜってーやだ!」 ぶるりと身体を震わせてレストマーが首を懸命に振った。なら自重しなさい、とのマリカの叱責にこくりと彼が頷く。 「一番楽なのは楽器を壊す事じゃないのか?」 「そこまでやったら流石に可哀想だと…一応ラミンの歌に頼るときもあるんだしさ」 ジェイルの極端な提案にリウが冷や汗を流しつつ即応えた。ここでレストマーが思わず賛同しようなら恐らくジェイルはすぐさま行っただろうが、レストマーは先程の話題に気を取られているらしくリウの膝の上で項垂れている。あの罰則は余程堪えているらしい。 「あー。その件は俺も行くよ。止められるかどうかは判んないけど」 「最悪の事態にならないことを祈るばかりだな」 ジェイルの発言に、リウは空笑いを浮かべるしかなかった。いまだへこんでいるレストマーの髪をくしゃくしゃにかき回しながら次は、とマリカに問う。 「英気を養う為に早めに寝ときたいし、さっと終わらせようぜ」 「うん、そうね。次はこの話なんだけど………ほらレストマー、いつまでへこんでるの!」 がす、と紙の束…封筒の角で頭を叩かれ、いってえ! とレストマーが悲鳴を上げた。 「マリカ! なにすんだ!」 「報告あんたが聞かなくてどうするのよ」 「だからって角はねーだろ!」 ぎゃんぎゃんと騒ぎ始めた二人を脇に、不意にジェイルと目が合った。二人で同時に疲れた溜息が漏れる。 今日も長くなりそうだなあ、とリウは心で呟いた。 ---- 城の運営をこの四人でやってたらいーなーという妄想です。 他にもいろいろ担当はいるけれど(クエストならモアナ、料理ならワスタムとか)、それを統括しているのがこの四人。団長とリウに話をつなげるならマリカとジェイルが一番早いから、ってことでいつの間にか流れが出来ちゃったみたいなイメージです。後にそのメンバーにロベルトが加わったりとかしてるといい。(希望) ので、会議のようなものがイメージが浮かんだので描いてみました。 ちなみにレストマーがへこんだ話はラミンを止めようとして食堂で他の仲間も巻き添えになり、乱闘になって器物破損、建物損壊を起こし料理長をぶち切らせた罰則…らしい…です。(ちゃんと考えてません) ■ |