老婆とシーア
: 呪われし、
 ばしり、と光が手を撥ね除けた、
「…っ」
 痛みに耐えて、再度光へ手を伸ばす。突き刺さる光の刃に奥歯を噛み締めて耐えながら、手を光の奥へ、奥へと伸ばす。
「もど、って。」
 辛うじて、掠れ声が出る。
「お願いだから…っ」
 じりじりと光が手から身体へと痛みを広げていく。光へ差し伸べた手が、不様に震えるのもわかる。
 けれど、けれど…まだやめることは出来ない。
「気付いてくれ、お願いだ…ったの、む、」
 ――嗚呼。こんな事になるなんて。
 こんなこと、自分は望んでいないのに。ただただ…ずっと、最後迄彼女と居たかっただけだったのに。
 彼女の最期を見届ける迄傍にいられるだけで、よかったはずなのに、なの、に。
 …なんで、こんなものが!
「…っ、ポーラッ…!」

 お願いだ、お願いだから
 彼女を 自分と同じような運命に 巻き込まないでくれ――

(私設定でポーラがシーアと一緒にいる事になる話…かくか? かけるかっ?)












あの夜
: 雨の夜
 ざらざらと雨が降っている。
 ざらざら。
 ざらざら。
 雨が、降っている。
 テーブルの上にある蝋燭をひとつのみを灯りにして彼はぼんやりと外を眺めている。今日は久方に降った雨。雨は嫌いではない。そう、嫌いではないはずなのに。
「…眠れませんか」
 寝台に入って眠りについていた筈の伴侶が音を紡ぐのに、軽く頷いて答えた。
「うん、気になる事があって…」
 ほんの数時間前、何かを訴える様に感じた力があった。たった一度、しかも僅かな…ポーラですら感知出来ない程度のもので、気のせいだろうかとも思ったが。それ以降、心の何処かがざわついて落ち着かないのだ。
「それになんか…なんというか。いやな感じがする」
「…シーアもでしたか」
「ポーラも?」
 上半身を起き上げて、是と彼女は答える。そして彼女も窓を見やり、
「空気が、…風がひどく重くて」
 刹那の事だった。
 びり、と身の毛の弥立つような気が二人を襲う。殺気ではない、だがひどく力のあるもの。咄嗟に身構えたふたり、だがそこから何も起こらなくて。
 ざらざら。
 ざらざら。
 気のせいだろうかと思い始めた頃、雨の音に混じりながら宿の下から微かにものおとが聞こえて来た。
 数人の密やかな声。ひとつはこの宿の女将の様だ、どこか慌てたような声が音として聞こえて来るが、何を会話しているのかまでは聞き取れない。
 顔を見合わせて怪訝に思っていると、ひとつの気配が近付いて来た。再度身構えるが、それもまた殺気のないもので。
 気配は自分達の部屋の前にとまり、戸をノックしてきた。
「…シーア君?」
 聞き覚えのある声、それはこの国で何かと世話になっている家の一員。
 ふと気付いて、慌ててシーアは戸を開ける。そこに佇んでいたのは全身雨に打たれて水浸しの姿の知り合い、クレオだった。
「クレオ、さん?」
「こんな夜更けにごめんね」
「いえ、でもどうして、えっと、とりあえず中に…」
 部屋へと誘おうとするも、彼女はじっと立ったまま。真剣な眼差しで彼を見つめている。その面持ちにシーアも黙り込む。
 ひとつ間があき、彼女は、口を開く。
「テッド君からの伝言がある」
 目を瞬かせた。彼から?
「テッドが」
「"逃げろ"、と」
 彼の顔から、表情が抜け落ちる。
 にげ、ろ?
「――いま、なん、て…?」
「逃げろと。それしか、聞いていない」
 再度問いかけようと、口を開いた、その時。
「―――シーアっ!」
 階段の向こう…酒場のほうから、幼い声が、悲鳴のような叫びが、飛んで来る。
「お願いだ、テッドを、テッドを…!」
「坊ちゃん、だめです…クレオっ」
 通りの向うを見、彼女はシーアに振り向いて。
「…元気で」
 それだけを言い、走り去っていった。
 姿を階段の影に隠し、数人の声のやりとりすら聞こえなくなった後、ぼんやりと彼女が去った跡を見つめながら自分の部屋が酒場の近くで良かったと頭の片隅で思う。ここは酒場を兼営している宿屋で、酒場の近くの部屋は当然酒場の騒ぎがとても良く聞こえる。だから一般の客はこの辺りには部屋を取らず、もっと奥のものを選ぶ。つまり自分達の部屋の辺りは、酔いつぶれた人間達が多いのだ。故に滅多な事では起きはしない。多分先程の少年の声もほぼ他人には聞こえていないだろう。
 ゆるりと戸を押しぱたりと閉める。目を数度瞬かせて。
 部屋へと振り返る、椅子にかけていた上着を羽織り、立て掛けていた双剣に手をかけるところで、ポーラの慌てた声が上がる。
「いけません、シーア」
 剣を装備する動作は緩めず、視線のみを彼女に向ける。
「何故?」
「貴方が一番判っているでしょう、彼が"逃げろ"と言ったのです。彼が、"私達"に。紋章の事に関わっている事は間違いありません。ならば逃げるべきです。彼の言う通りに。」
 手袋を鎮めていた動作を、ひたりと止める。
「…助けに行くのでしょう」
 既にもう、つもりではない、ここまで自分の行動を把握されている事に苦笑いを浮かべ、シーアは彼女の名を呼んだ。
「僕と誰かが危険な時に、僕は一度でも自分を優先させた事があるだろうか」
「ありません。だからこうして言っているのです。今回は本当に、危険です」
「うん、それは判る。でも僕はテッドに生きていてもらいたい」
 ざらざら。
 雨が降っている。
 その音の中に紛れず、りんとした響きを持ってそれは流れた。
 その声は意思。
「やっと笑える様になったんだ、長い時を一人で闘って来た彼が。
 此処で無闇に彼の命を長らえさせるのは苦痛を与えるだけかも知れない。でも彼は強い、だからきっとこれからも乗り越えられると思うし…彼は僕の大切な仲間だ、生きていて、もらいたい。
 …だから助けたい」
 駄目かな、と首を傾げながら、それでも揺るがぬ意思を秘めた瞳で彼女を見やる。ポーラは眉を潜めたまま息を殺し、暫しの沈黙の後、ふと息をつく。
「……こうなったら貴方は梃子でも動きませんものね」
「御免」
「…テッドに長時間の説教を貰っても、今回はフォローしませんよ」
 う、と顔を引きつらせるのに僅かに笑って、さっと彼女も立ち上がる。素早く此処を出る準備を始めてさほど立たない頃。
 ざらり。
 悪寒が背を走ると同時に、戸の向うから音が聞こえる。荒々しい音に張り上げられる野太い声。その声の中に微かにテッド、という言葉を聞き取り、二人は視線を絡ませ窓へと駆け寄った。
「どうしますか?」
「…ここの人に迷惑はかけられないんだけど。窓代とどっちが高いだろうか」
「匿われたら酒場やその辺りの調度品を使い物にならなくさせられると思います」
「じゃあ、窓一枚ならどうってことないかな」
「そうですね、それに」
 ひとつ切って、彼女は続ける。
「クレオさん達も…何かから逃げている様でした。こちらが囮になれるかもしれません」
「…うん、そうだね。じゃ、いこうか」
 そしてそのまま二人同時に、窓に体当たりをかけた。
 ぎゃしん、と音を立てて窓を割り、そのまま雨の降る街へと舞い降りる。二階から落ちたにも関わらず軽く地に脚を尽き、間を置かず走り出す。
 そしてふたつの姿は、雨の中に紛れていった。

(1の、某あのシーン……パラレルすいません、たのしいでっす(にこ!))












1テッド
: 「…こんにゃろう(怒)」
むかっぱちテッドさん…余談ですが私の1テッドさんは説教魔です












シルバーバーグ
: 僕の軍師
 常に冷静で時に冷酷とも言われてしまう策を編出す人
 厳しく、冷徹で、それでいて優しい人
 エレノア・シルバーバーグ
 僕の、軍師

(シーアにとっての軍師はエレノアさんのみです)












にっこにこテッド
: 「ひとつ下はお気を付けくださいだなっ!」「…」

 ちなみにほんとにわたしのテッドはこんなカンジのお方であります。ほんとに明るいというか、辛くても前を向けるようになったわけです。

 逆にシーアの方がよれよれになりつつあったりする…それをみて「しょーがねーなー」とか言いながら世話するテッドがいたりすると非常にもえなのです。すんませんポーラはあたりまえのよーにいます。ポーラも心配して世話したりシーアについて心配しあったりしています。150年後のテッドさんはシーアもポーラも大好きであります。

 …とかなんとか書いてた板。












おあそび
: ブチ切れテッドさん(笑
「…おまえさあ?」
 にいーこり、と昔は全く見せることのなかった恐ろしいほどすがすがしい笑顔を浮かべて、彼は自分の下にいる人間を見下ろした。テッドが怒っている事からか、それとも治っていない傷が痛むからかなのか判らないがだらだらと冷汗(脂汗?)を流して顔を青ざめている彼にぐっと近づいて、耳元で囁く。
「いいかげんくだらない事で突っ撥ねてると、俺が直々に"消毒"して世にも恐ろしい気持ちにしてやるぜ?」
 まて。まてまてまて。
 言葉に出したくても身体は素直に硬直して動かない。それを見てなのか、耳元で低く笑い声が聞こえた。それは酷くおっそろしい、嫌な意味合いの含んだ笑いで。
(獣…っ!
 獣がいるーーーーーーーーッ)
 …本気で己の身の危険を感じたのは言うまでもない。

(いつか書きます(笑))












さらに悪化するよ…
: 看病中
胃痛でぶっ倒れた4さまと飯当番でイライラなテッドさん